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■2009/06/28 (Sun)
■ 映画記事一覧 作品リスト あいうえお順 ■

【日本映画】
L cange the WorLd
隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS
かもめ食堂
スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ
その木戸を通って
茶の味
天使
天然コケッコー
トラ!トラ!トラ!
寝ずの番
間宮兄弟
蟲師
めがね
もしドラ
竜が如く 劇場版


【外国映画】
アーサーとミニモイの不思議な国
アイリス
アバター 3D映画体験記録
アポカリプト
アルマゲドン
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
ウォッチメン
AVP2
エコール
エリザベス:ゴールデン・エイジ
エリザベスタウン
エル・シド
エンロン
王の男
オリバー・ツイスト
カリフォルニア
紀元前1万年
奇跡のシンフォニー
きみに読む物語
銀河ヒッチハイク・ガイド
キング・コング(1933年版)
キング・コング(2005年版)
キング・コング(2005年版)エクステンテッド・エディション
キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カット
クイーン
グッドナイト&グッドラック
グラディエーター
クローサー
コーチ・カーター
最後のブルース・リー/ドラゴンへの道
殺人魚フライングキラー
シッコ
ジェシー・ジェームズの暗殺
シティ・オブ・ゴッド
市民ケーン
シン・シティ
スティング
スナッチ
スパイダーウィックの謎
スピード・レーサー
セブン
ダークナイト
デュエリスト
テルマ&ルイーズ
トゥモロー・ワールド
ドーン・オブ・ザ・デッド
ドッグヴィル
ドラゴン・キングダム
ナチュラル・ボーン・キラーズ
ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛
バイオハザード3
バウンド
パフューム ある人殺しの物語
ハムナプトラ3
ハンニバル
ファーゴ
ファイト・クラブ
ブラザーズ・グリム
ブラック・レイン
ブラックホークダウン
ブリッジ
ブルース・オールマイティ
ブレードランナー ディレクターズカット最終版
ブレードランナー ファイナルカット
ブロークバック・マウンテン
ベルリン・天使の詩
ホテル・ルワンダ
マゴリアムおじさんのおもちゃ屋
マン・オン・ザ・ムーン
ミスト
ミッション
ミュンヘン
酔いどれ天使になるまえに
LOVERS
ラッシュアワー3
リービング・ラスベガス
リバー・ランズ・スルー・イット
ルワンダの涙
レジェンド 光と闇の伝説
レッドクリフ Part1
恋愛睡眠のすすめ
レンブラントの夜警
ロード・オブ・ウォー
ロード・オブ・ザ・リング 第1章 旅の仲間
ロード・オブ・ザ・リング 第2章 2つの塔
ロード・オブ・ザ・リング 第3章 王の帰還

【ドキュメンタリー】
エンロン
シッコ
ブリッジ



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■2009/06/28 (Sun)
古典落語を復活させた名師匠、笑満亭橋鶴も臨終の時を迎えようとしていた。
「師匠、なんか、心残りおまへんか。わしら、なんでも、なあ」
一番弟子の笑満亭橋次が、橋鶴師匠の死を察しながら、明るい声をあげる。
すると、橋鶴師匠は呻き声のように言葉を発し始めた。橋次は、橋鶴師匠のそばへ行き、耳を傾ける。
617cbdb0.jpg「あ…あ……。そぉ……そぉ、見たい」
橋次は一度、茫然とした表情を見せるが、すぐに「たいしたもんや」と首を捻った。
「なんですの?」
橋次の周りに、笑満亭一門の弟子たちが集合した。
「女性のあれや。あれ見たいって、師匠いうてはるわ」
5f2c09fb.jpg4129d7d8.jpg




さっそく笑満亭橋太が家に飛んで帰り、妻の茂子を連れて病室に戻ってきた。
「ほな師匠、いかせてもらいます」
c11a3af3.jpg茂子はベッドの上に登り、橋鶴師匠の顔をまたいで立ち、思い切ってスカートを捲り上げた。
橋鶴師匠は、目をかっと見開いて、茂子のスカートの中を凝視していた。
誰もが、良かった、涙をぽろぽろ落としながら頷いていた。
「師匠。どうでした。見せましたよ」
茂子がベッドから降りると、橋次が橋鶴師匠のご機嫌を伺いに進んだ。
「……外、見たい言うたんや、あほ!」
橋鶴師匠が死んだのは、その3分後のことであった。
ac60abf7.jpg“笑い”は難しい。特に映画と小説野中での”笑い”は難しい。日本人は映画や小説に厳粛さを求める傾向が強いので、“笑い“を持ち込むのは不謹慎であると感じてしまう。「日本人は演歌気質だから」とはよく聞く理由だ。だから映画でこっメディを作るにしても、やや特殊な切り口が必要になってくる。アメリカ式のどたばたコメディとは違った方向性を探らねばらない。
というくだりで始まる『寝ずの番』は、ほとんどが通夜の晩を舞台としている。
ほとんど何の解説もないまま始まる映画だが、故人の親しい人たちが集り、思い出話によって物語の背景が解説される。
中心的な舞台は、通夜の晩から動かないが、語り手によって物語がうまく展開され、人間のドラマが掘り下げられていく。
a8c7d526.jpg《R-15》指定となっているが、下ネタがあまりにも多いのが理由であるらしい。確かに3分おきに下ネタが出てくる映画だ。下ネタの多さで映画倫理基準に引っ掛かる映画なんて、そうそうないだろう。



c6066e6a.jpg通夜の晩に語られる無礼講の物語だ。
エピソードの一つ一つは短いが、少しずつ折り重なって、映画らしい厚みのあるドラマへと昇華していく。
故人がどんな人間か、故人がかつてどんな仕事を経てきたのか。
一見すると、噺家の通夜の一幕を、ただ区切り取った059e98c7.jpgだけのように見える。
だが物語の構成は周到で、点々と語られた物語が、綴られていくうちに大きなドラマへと発展していく。
はじめに笑いがあり、次に意外な事実が明かされ、涙のドラマへと進んでいく。
e6501727.jpg主人公が落語家という設定なので、その方面から多くのゲストが登場する。ほとんどが顔見せ程度だが、こういうちょっと変わった趣向の映画だから、注目だ。



『寝ずの番』の物語は、“死”から始まる。
不幸だから笑えるのか、不幸だから笑おうとするのか。
普通なら笑いなど起きそうもない場所での物語だ。
だが、そんな場所だから落語家の人生が現れてくるのかもしれない。

映画記事一覧

作品データ
監督:マキノ雅彦 原作:中島らも
音楽:大谷幸 脚本:大森寿美男
出演:長門裕之 中井貴一 笹野高史 岸部一徳
   木下ほうか 田中章 木村佳乃 土屋久美子
   富司純子 石田太郎 蛭子能収 堺正章



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■2009/06/25 (Thu)
真っ暗な闇の奥底。
どこかで水の音が聞こえた。ぶくぶくと泡を作るときの音だ。
cfcc24f0.jpgしばらく水の流れに、体を漂わせているような感触があった。
やがて水の音が聞こえなくなった。
次に聞こえてきたのは、静かな音楽だった。
周囲を、誰かが取り囲む。でも少女の体は箱の中に封じられて、外の世界が見えなかった。
間もなくして、誰かが箱の鍵を開けた。扉が開かれ、光が射し込んできた。
少女は目を見開いて、辺りを見回した。
そこは知らない場所で、知らない女の子たちが、少女を囲んで見下ろしていた。
「こんにちわ。あなたの名前は?」
年長者の女の子が膝をついて、訊ねた。
「イリス」
「私はビアンカ」
7180b351.jpg少女たちが集る秘密の空間……。もし男性監督が描いていたら、変に理屈っぽくなったり、自身の欲望が投影されて、その世界は変質していただろう(日本のアニメ、そんなんばっかりだけど)


深い森の向こう側。
そこに、“エコール”と呼ばれる閉ざされた学校があった。
エコールには男性の影はなく、大人の女性もごく数人しかいない。
学校の周囲は森と高い壁に閉ざされていて、外の世界と接する方法はなく、接することは許されていなかった。
もし、エコールを抜け出して森を出ようとしたら、厳しい罰か、あるいは死が下される。
3934022a.jpg夢と幻想が入り混じる空間、エコール。男性が描いたら夢世界だが、ルシール・アザリロヴィック監督は少女自身が感じている閉塞感や葛藤を物語りの中に盛り込んでいる。



7d3a1f58.jpg女には“少女”と呼ばれる特別な時間がある。
大人の女でもなく、子供でもなく、一方でそのどちらでもある時期。
少女たちはどこからやってきて、どこへ去っていくのか。
女たちは、誰もがかつて少女であったが、女3aadb533.jpgたち自身、少女であった記憶をどこに封印したのか知らない。
少女という神秘のヴェールは、少女にとっても至高のヴェールなのだ。
映画『エコール』は、少女たちが必ず通過するあの場所を、幻想的な空気を讃えて描き出す。
69737c31.jpg“少女時代”という幻想が現われるのは芸術の世界だけだ。覚醒した人間はその世界に足を踏み入れることはできず、手にすることもできない。少女という時間は、芸術の中で永遠に戯れる。


“エコール”が描き出す世界は、現実社会には存在しない、観念的な空間である。
現実の社会はあまりにも不浄で汚れ、少女が過ごす場所としてふさわしくない。
少女という時代は、少女自身の意識の中にもなく、現実世界から遠く突き放された幻想の中で、はじめて具体的な姿を浮かび上がらせる。
そこでは時の流れは永遠で、少女たちは夢幻に漂う時間の中を戯れている。
エコールの世界を探そうとしても決して見付からないし、掴もうとしても蜃気楼のように消えてしまう。
エコールが現れるのは芸術の中だけであり、エコールの世界が出現するのは、舞台の向こう側に漂う闇のなかだけである。
5c7a8ac3.jpg“エコール”がどんな世界であるのか、構造については曖昧な噂話として語られる。そしてその噂話には、いつも死に関わる恐ろしさが込められている。そんな空想も、自身の身体に女性としての自覚が生まれると共に、性的な景色を帯びるようになる。

子供の時代には、世界の欠落部分を空想で埋め合わせようとする。
子供にとって世界の大半は空想であり、夢を抱く場所であり、恐れを抱く場所である。
だが、いつの間にか世界は変容し、世界は空想するものではなく、目の前に直面する世界を“現実”として受け入れようとする。
そうして、気付けば子供時代は終了する。少女の時代も、気付けば終了している。
世界はやがて動きを止めて、意識は社会に服従し、肉体は性の愛撫を求めるようになる。
f72ea2f7.jpg映画『エコール』は直接的な言葉では多くは語られない。沈黙した映像の中に、多くの隠喩が託されている。映像を止めて、少し考えてみるのもいいかもしれない。



少女の時代がいつ始まって、いつ終わったのか。
それは誰も知らない。
“エコール”
そこは、すべての女たちが通過した場所。
全ての女が忘れてしまった、幻想の世界。

映画記事一覧

作品データ
監督:ルシール・アザリロヴィック 原作:フランク・ヴェデキント
音楽:リチャード・クック 脚本:ルシール・アザリロヴィック
出演:ゾエ・オークレール ベランジェール・オーブルージュ
   リア・ブライダロリ マリオン・コティヤール
   エレーヌ・ドゥ・フジュロール



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■2009/06/22 (Mon)
時をかける少女

d0456364.jpg黒板に、大きく「進路説明会のお知らせ」と書かれていた。その下に、道を分けるように、「理系」「文系」の二つが四角に囲まれて並んでいる。
掃除当番の紺野真琴と早川友梨は、箒を片手に黒板を見上げていた。
「真琴。理系か文系か、決めた?」
友梨は、何気ない感じに真琴に尋ねた。
「まだ。友梨は?」
「私もまだ」
友梨がそう言うと、真琴は安堵のため息をついた。
「よかった」
「すぐには決められないよね」
友梨はぼんやりと呟くようにしながら黒板を見上げた。
「先のことは、わかんないよね」
真琴も、黒板の「文系」「理系」の二つの文字を見上げた。
真琴にとって、未来ははてしなく遠い。と、真琴自身はそう思っている。
だから、どんな選択に対しても、決断はしない。
未来はあまりも遠くて、漠然としているから。それに、真琴は「未来に行きたい」と願っていなかった。
7fe25890.jpgプロデューサー曰く、現代は不可逆の原則が崩壊した時代だという。ビデオやゲームで、かつて一過性で終っていた快楽や恍惚を何度でも繰り返せるようになった。過去を巡り続ける『時をかける少女』はそういった現代の象徴なのだろうか。


18194224.jpgだがある日、真琴に天啓のようにタイムリープの力が与えられた。
自転車の事故で電車に跳ねられそうになった瞬間、真琴はほんの一瞬前に戻っていた。
真琴はこの事件を切っ掛けに、タイムリープの力が自身に宿っていることに気付く。
タイムリープの力を使って、真琴は何度も過去に戻り始める。
食べたいものや、やり直したい失敗や、小さな欲望を実現させるために、何度も何度も過去へとタイムリープする。
同じ時間をぐるぐると繰り返していても、真琴はいつまでも一人勝ちでいられると思っていた。
103ccd1a.jpg美男両手に三角関係のどろどろした話が……という作品ではない。「ひょっとしたら、私は彼のことが好きかもしれない」という微妙な心理を描いた作品。「好きかも知れない」を確かめる恋愛映画は珍しいかもしれない。


33917235.jpgそんなある日の夕暮れ。右手を流れる川が、夕暮れの光を宿して、きらきらと輝いていた。真琴は、千昭が漕ぐ自転車の後ろに乗っていた。
「本当に興味ないのかな?」
真琴は、千昭の背中に話しかけた。
実はさっき、功介が後輩の女の子に告白されたのだ。しかし功介は、告白を断ってしまったのだという。
「功介がねえっていうときは、ねえよ」
千昭は断定した。
「……ちょっとホッとした」
真琴はぽつりと言って、夕日に輝く川を見詰めた。
「なんで?」
千昭が理由を尋ねた。
「彼女できたら、大事にするよね」
「そういう奴だ」
真琴が確かめるように言うと、千昭は同意した。
「そしたら、野球、できなくなるもん。……なんだかな。ずっと三人でいられる気がしてたんだよね。遅刻して功介に怒られて、球取れなくて千昭になめられて……」
真琴は体を後ろにそらして、夕暮れの空を眺めた。
“今”がずっとずっと続けばいいと思っている。未来に行く必要なんて、真琴には思いつかなかった。
すると、千昭は気になるように真琴をちらちらと見た。
「真琴」
「うん?」
「俺と、……付き合えば」
千昭はもどかしそうに何度もつっかえて言った。
真琴は茫然として千昭の背中を見詰めた。
「止めて。ちょっと止めて」
自転車が止まった。千昭が真琴を振り返る。
「なにそれ?」
「え?」
千昭はごまかすように、ちょっと視線を逸らした。
「今の話」
真琴は厳しく追及しようとした。
「付き合おう」
千昭は、今度ははっきりと真琴に言った。
「どっからそういう話になったのよ」
真琴自身に、静かに感情が波立つのを感じた。
「功介に彼女ができたらって話。俺、そんなに顔も悪くないだろ」
千昭は照れ隠しのように笑った。
「……まじ?」
「まじ」
真琴は、茫然と口をあけた。
沈黙が二人の間に漂った。
真琴は、衝動的に自転車から飛び降りると、過去に飛んだ。千昭の告白をなかったことにするために。
67fb9fa0.jpgあまりにも有名な話だが、細田守監督は『時をかける少女』を手がける以前、ジブリに在籍し『ハウルの動く城』を制作していた。だが給料未払い問題が発生し、ジブリの全スタッフから追い出されたのだという。細田守自身、監督業の終わりと思ったが、逆に転機になったかもしれない。ちなみに美術スタッフもは見れば、元ジブリの実力派が名を連ねている。裏事情はわからないが、細田守監督はジブリ内で信頼を得ていたようである。
真琴にとって、未来は遠い遠い別世界だった。現実感を感じない、いや、異世界のような場所であった。
だが、いつか未来に進まなねばならない。
その切っ掛けを与えたのは、千昭の告白だった。
千昭の告白を受け入れるのか、拒否するのか。
千昭のことは好きだ。でも、そういう恋愛感情での好きとは違う。……多分。もしかしたら、千昭への感情は、恋愛感情によるものかもしれない。
そんな自分の心の決断すら、真琴にはできなかった。
「理系」か「文系」のような選択のように、未来へ進むには何かを決定し、その方向へ真直ぐ進まなくてはならない。
だが、真琴はそんな決断を先延ばしにして、過去に飛び続ける。
fca29675.jpgキャラクターは影なしを原則にしてよく動く。影なし作画は、素人目には簡単そうだが、物の質感や立体を描きにくくなり、非常に難易度が高くなる。




718c3217.jpgアニメーションでの『時をかける少女』は、ひたすら過去を繰り返す物語である。もしかしたら、真琴のタイムリープは未来にも飛べるのかもしれない。
だが、真琴は延々、過去に飛び続ける。
現代人にとって、確かに未来は漠然としていて、それでいて不安を伴うものだ。
未来は、かつてのように、能天気に描けるものではなくなってしまった。
現代の子供たちは、未来をファンタジーとして夢想しない。科学文明がどんな幸福をもたらしてくれるのか。世界から戦争は終っているのかもしれない。いや、ひょっとすると『ブレードランナー』のような荒廃した風景が待ち受けているかもしれない。それはそれで、魅力的な未来のビジョンだ。
そんな未来へのビジョンは、現代の我々は誰ひとり思い描けず、提示することもできていない。
もちろん、かつて見た未来はたくさんある。例えば『ドラえもん』がそれだ。
『ドラえもん』は未来からやってきたロボットだが、すでに『ドラえもん』が描き出した未来へのビジョンは、未来ではなくノスタルジーである。『ドラえもん』は未来からやってきたのではない。
だから『時をかける少女』にも未来は描かれない。
延々、過去の、同じ時間が繰り返される。真琴は未来へ進まず、過去をぐるぐると、記憶の中にある恍惚と快楽を繰り返し続ける。
古い映画やアニメや、思い出に逃避する現代人と同じように、真琴は未来に進もうとはしない。
2fdb9f9a.jpg芳山和子役には原沙知絵が演じている。かつて、大林宣彦監督の実写版『時をかける少女』で演じた女優だ。アニメ版『時をかける少女』は、実写版の十数年後という設定になっている。ちなみに芳山和子が「魔女おばさん」と呼ばれているのは、細田守が東映時代に演出した『おじゃ魔女ドレミ』で、原沙知絵をゲスト出演させたから、その繋がりだという。

それでも、時間というのは“不可逆”である。過去を何度も繰り返しているように思えて、実は時間は前へと進んでいる。望まなくても、未来はやってくるのだ。
真琴は千昭への告白をなかったことにした。
だから何も起きないわけじゃない。なかったことにしたら、それはそれで別の未来がやってくる。“なかったことにした”というのも、選択の一つだからだ。
自由に過去に戻れるように思えても、実は真琴に流れる時間は、現実の物語は前へと進んでいるのだ。
それが、いつか取り返しのつかない事件を起こしてしまうかもしれない。
そんなとき、真琴自身に、厳しく“未来”が突きつけられる。
選択の拒否が許されない、“未来”である。
f2610646.jpg『時をかける少女』公開以前は細田守は「知る人ぞ知る人」で、作品は大きな期待をかけられていなかった。だが公開後は絶大な評価を受け、今や「知らぬものがいない名監督」である。



『時をかける少女』は、延々、過去を巡り続ける映画だ。だが真琴が走り出したとき、物語は“過去”という鎖から解き放たれ、未来へと進んでいく。
「走って行く」
それは未来への、あまりにも清々しいメッセージだ。

作品データ
監督:細田守 原作:筒井康隆
音楽:吉田潔 脚本:奥寺佐渡子
キャラクターデザイン:貞本義行 美術監督:山本二三
作画監督:青山浩行 久保田誓 石浜真史 主題歌:奥華子
アニメーション制作:マッドハウス
出演:仲里依紗 石田卓也 板倉光隆
   原沙知絵 谷村美月 垣内彩未 関戸優希
   桂歌若 安藤みどり 立木文彦 山本圭子
   横張しほり 松岡そのか 反田孝幸 倉島麻帆



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■2009/04/16 (Thu)
階段を登りつめると、そこは狭い庭園になっていた。といっても、手入れが行き届いてなくて、草花は汚く荒れかけている。
だけど、そこから見下ろす風景は最高だった。庭園のすぐ向こう側は絶壁が落ちていて、その向うの風景が一望できた。なだらかに続く草原に、小川が横切り、ずっと向うの山岳が見渡せた。
「なんですか、ここ」
使用人のギルバートが感激した声を上げた。
「凄いだろ。ここ、今朝見つけたんだ」
オズは自分が作ったわけでもないのに、自慢げに答えた。
「本当、綺麗」
オズの妹のエイダも、ギルバートと並んで草原の風景を眺める。
オズは、二人が風景に見入っている隙に、箱の中のものを取り出した。
「ギル!」
オズは使用人の名前を呼んで、箱の中の物を投げ渡した。真っ白な式典用の衣装だった。
「これは、オズ坊ちゃんが着るには、小さくないですか?」
ギルバートは衣裳を広げてみて、怪訝に首を捻った。
「バカ。いいんだよ。着るのは、お前なんだから」
1111be88.jpg「はい?」
ギルバートの声のトーンが一気に上がった。
「実はな、今日の成人式の儀に、お前も参加することになっているんだ。俺の服をかしてやりたいけど、大きくて合わないだろう? 伯父さんに頼んで、仕立ててもらったんだ」
「いけません。僕はただの使用人ですよ。そのような席に参加する資格などありません」
229aae2e.jpgギルバートは慌てて反論した。だけどオズは、静かに首を振った。
「違うよ、ギル。使用人としてじゃない。俺の友人として参加してほしんだ」
それはオズがずっと抱いていて本心だった。
ギルバートは感激したふうに瞳を潤ませた。それから、オズの頭を下げる。エイダがギルバートの頭を「よしよし」と撫でていた。
そんなとき、気持ちのいい風が吹いてきた。庭園の草花が、一斉にざわざわと葉をこすり合わせる。
その風が過ぎ去りかけた時、オズはふとオルゴールの音が混じるのを聞いた。
61aa2d00.jpg何だ、この音?
オズは何となく不思議な気持ちになって、オルゴールの音色を探そうと庭園の中を進んだ。
目の前の、壁のような藪の方向へ。その向うから、オルゴールの音が聞こえてくる気がした。
と突然に、地面が崩れた。芝生の下の煉瓦が崩れたのだ。
「坊ちゃん!」
6a4c1b14.jpgギルバートがオズの後を追った。オズはギルバートに手を伸ばした。結局二人でもつれ合いながら、奈落の底へと転がり落ちていった。
「おい、生きているか、ギルバート」
オズは全身がひりひりするのを感じながら、ギルバートを確認しようとした。
ギルバートはオズを抱きつくようにしてかばっていた。きっと、ギルバートのほうがダメージは大きかったはずだ。
「何とか」
ギルバートの頼りない声が返ってきた。どうやら無事のようだ。
オズは倒れたまま周囲を見回した。さっき崩れた場所から、階段になっていたのだ。そこを、二人で転げ落ちてきたのだ。崩れた場所から光が差し込んで、エイダが心配そうに見ろしていた。
オズはゆっくり体を起こしながら、階段の反対方向に目を向けた。
09663338.jpgそこは小さな空間だった。下草が刈り込まれ、奥に墓標のような十字架が一つたたずんでいた。十字架の背後には大きな樹木が立ちはだかっている。見上げると、樹木の枝先がさっき壁のように見えた藪と重なり合っていた。枝の隙間から光が差し込んでいたが、藪と枝が重なってこの空間が見えなかったのだ、と理解した。
オズとギルバートは、十字架に興味を持って近付いた。
「もしかして、ここは墓地ですか?」
「うん。でも、これ一つないな」
ギルバートが疑問を口にした。確かにこの小さな空間には、墓標はそれ一つだけだ。
52297420.jpgギルバートは墓標の碑文を読もうと、膝をついた。オズは十字架の右翼に、黄金色の何かが絡みついているのに気付いた。懐中時計だ。
オズは、何となく懐中時計を手に取った。
途端に、イメージが流れ込んでくるのを感じた。
何だ、今の。
オズは懐中時計の蓋を開けて、慣れた手つきでねじを巻き上げる。なぜかオズは、自分の手の動きに、自分の意思を感じなかった。772c0ac3.jpgまるで別の誰かが自分の腕を掴み、操作しているみたいだった。
懐中時計に仕込まれたオルゴールがメロディを紡ぎ始めた。
……聞いた覚えのないメロディ。誰のものかわからない懐中時計。でも、なんだろう。なんとなく、どこかで……。
オズはぼんやりと自分の思考に沈んでいった。
bed65968.jpg次の瞬間、オズははっと目が覚める気がした。いつの間にか別の場所にいた。
円形の小さな部屋で、床が赤と黒の市松紋様になっていた。壁には一杯の人形が納められている。
ここ、どこだ。
ひどい動揺に、心をかき乱されるのを感じた。
ふと人形が動いたような気がした。いや、気のせいじゃなかった。人形たちが一28cee02f.jpg斉にオズを振り返った。それからかたかたと首を揺らし、笑い声を上げ始めた。笑い声に混じって、「やっと彼が帰ってきた」という言葉を聞いたような気がした。
オズは呼吸が苦しくなって、足元がふらついた。恐怖に思考が奪われ、部屋のなかのものがぐるぐる回りながら自分に迫ってくるような錯覚を感じた。
「静かにして頂戴。彼が驚いているわ」
声がした。幼い少女の声。人形たちは、さっともとの人9d8664d6.jpg形に戻った。
オズが振り向く。そこに立っていたのは、白いドレスに紫のリボンを首に巻いた少女だった。肌がひどく白く、長い黒髪をフリンジにしていた。
「君は?」
オズは、自分でも声が引き攣っているのを感じた。
「やっぱりあなたは来てくれた。嬉しい!」
少女は答えず、両手を広げてオズに飛びついてきた。
315799fe.jpgだが、少女の体はオズをすり抜けてしまった。
オズは後ろを振り向いた。当り前のように、少女の背中が見えた。オズは喉の奥が痺れてしまって悲鳴すら上げられなかった。
「みんな、私のことが嫌いなの。だから、誰も会いに来てくれないの」
少女は急に沈んだ声で、肩をすぼませた。
「ちょっと待って。訳がわからない。君は? ここは一4060933b.jpg体?」
オズは喉がからからになるのを感じならが、疑問を搾り出した。
しかし、やはり少女は答えず、側にあった人形を掴んだ。
「何を言っているの? あなたはいつもここに来てくれたじゃない。そう、私が寂しい時、あなたはいつも側にいてくれた。あなたさえいれば、私はここから出られなくてもかまわない」
少女の手から、874f1f48.jpg人形が落ちた。すると突然に人形は火を吹き始めた。火はただちに勢いをつけて渦を巻き、火柱となって立ち上がった。
凄まじい熱線が目の前に迫り、オズは逃げ出そうと背後を振り返った。だが、炎は意思を持っているように、オズを回り込んで、逃げ場を奪った。
動揺と混乱がオズの意識を奪った。炎の光がオズの視界を奪うと、今度は急激に辺りが真っ暗闇に閉ざされるのを感じた。熱線も光もd01bfd63.jpg消えうせて、あたりは冷え冷えとする真っ暗闇に包まれた。
その時、オズの両肩に誰かが手を置いた。そして耳元に、誰かがそっと顔を寄せてきた。
「殺してやる」
少女の声だった。暗い呪いの意思が混じった声だった。


697bba05.jpg6034bd28.jpg日本建築も暗いが、西洋建築もやはり暗い。特に前衛的な様式美を持った建築は、有象無象が不気味な影を湛え、ある瞬間、魂を持っているように思えてしまう。
『Pandora Hearts』の舞台は、ヨーロッパ風のブルジョア社会である。
時代は不明で、おそらくは厳密なヨーロッパを象ったものではなく、どこかしらホラー・ファンタジーの雰囲気がある。
ゴシック建築を残した古典建築風の屋敷の中を、少年が駆け回っている。どうやら、成人の式典があるらしいが、少年は儀式ばったものが煩わしくて、広い屋敷の中を逃げ回っていた。
少年を包み込むのはゴシック建築特有の美の世界であり、陰鬱な影を湛える不気味な空間である。
物語は快活な少年を中心に描いているが、その色彩はどこか暗い。
不気味な影は作品全体を包み込み、少年をゆっくりと飲み込もうとしている。
fd9fa037.jpg1c1dff85.jpgあえて言うなら、少年はそこにいるだけで罪だ。少女も罪を運んでくるが、少年は自身が罪を犯すし、周囲が罪を与えようとしてしまう。


『Pandora Hearts』に描かれるキャラクターはくっきりした線と色彩で塗り分けられている。
だが、やはりどこかしら暗い影がまとわりついている。二段影はブラックで塗りつぶされているし、瞳にも暗い影が描きこまれている。
『Pandora Hearts』は、何もかもが暗く、不吉な影を湛えながら描かれている。
これは冒険物語への予兆だろうか。それとも、もっと暗く、不吉な悲劇への予告だろうか。

作品データ
監督:加戸誉夫 原作:望月淳
キャラクターデザイン:小林千鶴 山岡信一 プロップデザイン:影原半蔵
総作画監督:小林千鶴 美術監督:わたなべけいと
脚本:関島眞頼 音楽:梶浦由記
色彩設計:関本美津子 撮影監督:工藤友紀
アニメーション制作:XEBEC
出演:皆川純子 川澄綾子 坂本梓馬 梅津秀行
   福原香織 久川綾 大川透 広橋涼 後藤沙緒里 寺谷美香



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