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■2009/08/16 (Sun)
d8b3f6c4.jpg2019年。ロサンゼルス。
高層ビルはどこまでも高く聳え、煌くネオンが夜を遠ざけている。空は汚れ、絶えず酸性雨を降らしている。宇宙旅行へと誘うコマーシャルが喧騒の上で繰り返されている。
34e2ae3b.jpgデッカードは、酸性雨にうんざりしながら、新聞を読んでいた。
「開きました。いらっしゃい」
間もなくして、スシ・バーの親父が、日本語でデッカードを手招きした。
デッカードは、新聞紙で雨をよけながら、スシ・バーの屋根の下に入っていく。
af309b51.jpg「さあ、どうぞ。何にしましょう」
スシ・バーの親父は、日本語で景気よく、座るように勧める。
「四つくれ」
「二つで充分ですよ」
「いや、四つだ。あと、うどんも」
すぐにうどんが運ばれてきた。デッカードはうどんの麺を手繰り、啜り始める。
すると、背後に何者かが現れた。判別不能の異国の言葉で、デッカードに話しかけてくる。
「逮捕するといってます。あなたはブレードランナー?」
d9d5128c.jpgデッカードは、謎の男に連れられ、警察署に向かった。そこで、かつての上司であった、ブライアンと会う。
「レプリが4匹、潜り込んだ。スペースシャトルを奪って、乗員を皆殺しにしおった。お前が処分しろ」
「俺は辞めた。ホールデンを使え」
「使ったさ。生きているうちはよかった。だが、お前には劣る。力を貸せ。命令だ」
こうしてデッカードは、ブレードランナーとして脱走レプリカントを追うことになった。
f11b2ca1.jpgこの作品と、ビデオテープが擦り切れるまで繰り返し見たという人は多いはずだ。左のカットは、明らかに『GOHST IN THE SELL』で引用された。押井守は、『ブレードランナー』の影響から抗おうとしなかった。

『ブレードランナー』の名を知らぬ者など、いるだろうか。
037e491b.jpg最も有名な映画のひとつで、すでに映画の歴史の一部である。
当時公開されたどの映画よりも刺激的で、今において最大の影響力を持つ作品だ。
誰もがSFといえば、この作品で見た光景を思い浮かべる。
クリエイターに「未来都市を描け」と指示したら、間違いなく『ブレードランナー』そっくりの画像を作り始めるだろう。
『ブレードランナー』が描いたイマジナリィは途方もなく強烈で、その映像体験を超える作品は、いまだに存在しない。
197788f8.jpg当時、先鋭的なデザインと圧倒的な重量感で魅了した都市の景観。デジタル全盛の今見ると、手作り感がある。日本語の歌も、シュールだ。都市の風景はメビウスの絵画が参考にされた。


物語は典型的な探偵ものの構造を踏襲している。
淡々と事件を追う刑事と、逃亡する犯人。
刑事の側には、常にいわくつきの女の影がある。
『ブレードランナー』は通俗的な探偵ものよりも、さらに静かで、感情が抑制されている。
時々、点描のように挿入されるカットや、叙情的な音楽は、物語の解説役ではなく、シーンが持っている力を引き出すためだけに使われている。

“天使は焼け落ちた
 雷鳴とどろく岸辺
   燃え盛る地獄の火”
そのレプリカントは、詩を解する。
姿は人間そのもの。
あまりにも高性能すぎるロボットは、やがて感情を持つ。タイレル社は、安全措置として、レプリカントの寿命を4年に設定した。
感情に目覚めたロボットは、人間の都市を、どのように見詰めるだろう。
ロイ・バディーは自身を疑い、愛を交わし、間もなく迫る死に怯える。
人間とロボットの違いは?
ロボットでも、死に際には悲鳴を上げ、血を流す。
デッカードは、そんな様を目にして、間もなく自身を疑い始める。
“俺は、人間なのか? レプリなのか?”
c826b6b7.jpg人間とロボットの境界線が崩れていく危うさを描いてる。監督リドリー・スコットは、デッカードがレプリカントであるという仮説を作り、それを示唆する画像作りに腐心したが、俳優の理解は得られなかった。


だが、現代の目線で見ると、『ブレードランナー』は継ぎ接ぎだらけの映画と言わねばならない。
d6dac20e.jpg追加撮影とこだわりすぎた編集で、不可解な描写があまりにも多い。
チープで簡単に壊れるセットや、あからさまなデジタル合成。
リドリー・スコットは、そんなガラクタの山すら、見事なほど美しい都市として描き出している。
粒子の荒い映像も、ガスで覆いつくされた都市も、何もかもリドリー・スコット特有の美意識を作り出す手助けをしている。
それも今やありきたりの映像でしかない。
当時の人々を驚愕させた描写の数々は、現代の技術の前では何の感動も呼び起こさない。
かつて“SFのオリジナル”と呼ばれた『ブレードランナー』。未だに、世界の芸術家が越えられない壁。
だが、時代は『ブレードランナー』を追い越してしまった。
この映像が、今の若い人達にどの程度の感動を与えるというのだろう。

『ブレードランナー ファイナルカット』の記事へ

映画記事一覧

作品データ
監督:リドリー・スコット
原作:フィリップ・K・ディック 音楽:ヴァンゲリス
脚本:ハンプトン・ファンチャー デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
出演:ハリソン・フォード ルトガー・ハウアー
   ショーン・ヤング エドワード・ジェームズ・オルモス
   ダリル・ハンナ ブライオン・ジェームズ
   ジョアンナ・キャシディ M・エメット・ウォルシュ
   ウィリアム・サンダーソン ジョセフ・ターケル



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■2009/08/16 (Sun)
34499658.jpg人類は多くの勘違いをしている。例えば人類は、自分たちが地球上でもっとも賢い生き物だと思っている。
だが、実際には3番目だ。
2番目に賢い生き物は、もちろんイルカだ。
イルカは、地球の滅亡を何年も前から知っていて、何度も人間に警告を送ってきた。
だが人類は、イルカたちのメッセージを誤解し続けた。イルカが水中を走り、飛び上がってボールを叩くのは、餌のためだ、と。
とうとうイルカは人類を見限り、地球を去る決断をした。
イルカたちは2階連続の宙返りと輪くぐりを決めてみせた。
だけど、このメッセージも誤解されてしまった。
本当の意味は、
“さよなら。魚をありがとう”

2858e503.jpg『銀河ヒッチハイク・ガイド』の物語は、一人の人間から始まる。正しくは地球人。名前はアーサー・フィリップ・デント。
アーサーはある朝、自分の家の前にブルドーザーの振動が迫るのに気付いた。ブルドーザーが自分の家を破壊するつもりなのだ。アーサーは慌てて家の前に飛び出し、ブルドーザーの前に立ち塞がった。
「デントさん、抗議するならもっと早くしないと。建設計画は1年前から役所に提示されていたんですよ」
工事主任は、アーサーに呆れつつも事務的に伝えた。
アーサーは何も知らなかった。いつの間にかご近所がいなくなっていた事実に。それから、バイパス工事の事実に。
そんなアーサーの前に、親友のフォードが大慌てで走ってくる。
097116f0.jpg「僕の出身はギルフォードではなく、ベテルギウス星周辺の星なんだ」
フォードはアーサーを近所のパブに連れて行きながらそう教えた。
アーサーはやはり知らなかった。親友のフォードが、実は地球人ではなかった事実に。
438a0971.jpgだが、無知なアーサーが知らなかったのは、親友のフォードが宇宙人だったという事実だけではなかった。
「実は、あと12分後で地球は消滅するんだ。君は命の恩人だ。だから今度は、僕が君を助ける」
地球はもうすぐ滅亡する。
実は宇宙バイパス工事のために、地球取り壊しが決まっていたのだ。この事実は、ケンタウルス座アルファ星の事務所に50年も掲示されていた。何も知らなかったのは、地球人だけだった。
フォードはまさに地球が木っ端微塵に破壊される寸前、アーサーをつれて宇宙空間へと飛び出していく。
8aaca344.jpgf5b97573.jpg本作は、イギリスで最初に放送されたラジオ番組である。それが好評を得て、小説版、舞台版、映画版が製作された。小説の出版は100万部を越えている。ちなみに、冒頭のパブのシーンに出てくる女性は、舞台版のヒロインだ。
あまりにも唐突で意外なプロローグで始まる映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』。
地球は映画開始十数分であっけなく消滅し、宇宙空間を漂流する物語へと移っていく。
そこから展開されるストーリーは、どの瞬間を区切りとっても奇想天外であり、秀逸だ。
あまりにもユニークなキャラクターたち。決してユーモアを失わない物語展開。
コメディ作品だが、安易に作っていない。コメディといえば、パロディと考えられがちだが、『銀河ヒッチハイク・ガイド』は過去のどのSF映画に似ていないし、誰も考え付かなかったような独創性に満ちている。
純粋なるオリジナル作品である。
f66c5298.jpg『2001年宇宙の旅』がそうだったように、本作もコンピュータ技術、概念に多大な影響をもたらしている…らしい。グーグル計算機に「人生、宇宙、全ての答え」を入力すると、「42」と答えが出るのも、この作品の影響。



『銀河ヒッチハイク・ガイド』の物語は、不条理と不合理に満ちている。
冒頭の主人公アーサーの家が取り壊される場面からして不条理だが、不条理はそれだけでは終らない。親友が宇宙人だったこと、さらにあっけなく地球が破壊されてしまうこと。
6e5a8106.jpgそれから冒険の物語が始まるが、正統派SFにありがちなエイリアンの戦いは一切描かれない。詩の朗読を拷問と考える宇宙人の常識や、高性能すぎて欝機能を搭載したロボット。道理を飛躍した不条理が延々と繰り広げられていく。
だが、不条理を突き抜けて、いつのまにか道理に合った物語を発見していく。
世界はなんなのか。どうして構築されているのか。その秘密は。
一見、不可解に思える現象の数々にも、追求すればどこかに理由が見付かる。まるで哲学の問いを解くように。不条理と不合理に規則性を与え、一つ一つに理由を見出せば、意外な宇宙の秘密が発見されるかもしれない。
不合理に答えが与えられた時、映画は意外なくらい感動的ですっきりと収まったエンディングへと向かっていく。
5db4aa97.jpgSFのお約束から外れて、新しい映画を構築した作品。意表を突いた設定、シーンが連続する。派手なアクション満載のSF大作に慣れた人が見ると、がっかりするかもしれない。



『銀河ヒッチハイク・ガイド』にはいわゆるSF映画にありがちなシチュエーションは何もない。凶暴なモンスターなど登場しないし、無理矢理こじつけたような危機の連続などもない。
94fbbada.jpg全体が独特のユーモアに包まれていながら、それでいながら驚くようなオリジナル作品である。
コメディ映画と思って油断してはならない。
『銀河ヒッチハイク・ガイド』はコメディ映画だからといって小さくは収まらないし、通俗的な道徳につづまって終るような映画ではない。想像を越えた奇想天外な作品であり、超大作SF映画を軽く越えるスケール感を持った傑作であり、それでいて、まったく無意味な作品だ。
新しい種類の映像体験を提供する作品である。

物語中に登場する謎のメッセージ『42』。ウィキペディアの記述があまりにも面白いので、ぜひどうぞ。
ついでに、『銀河ヒッチハイク・ガイド』のウィキペディア記事も。

映画記事一覧

監督:ガース・ジェニングス 原作・脚本:ダグラス・アダムス
脚本:キャリー・カークパトリック 撮影:イゴール・ジャデュー=リロ
出演:サム・ロックウェル モス・デフ ズーイー・デシャネル
    マーティン・フリーマン ビル・ナイ ジョン・マルコヴィッチ
    ワーウィック・デイヴィス アラン・リックマン スティーヴン・フライ
    イアン・マクニース ヘレン・ミレン アンナ・チャンセラー



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■2009/08/16 (Sun)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P025 第4章 見合う前に跳べ


客間に戻ると、夕食の準備が始まった。私たち9人が向き合わせて座ると、女中たちが膳を持って入ってきた。夕食は高級料亭でしかお目にかかれそうもない懐石料理だった。
ご飯、味噌汁に、向付に刺身が盛り付けられ、山菜と大根を和えたサラダが並び、白菜の漬物が添えられていた。ご飯も味噌汁も碗の底が深く、量はちょっと多めだった。
料理の準備が済むと、女中たちは丁寧に頭を下げて、静かに客間を立ち去っていった。料理の豪華さに、私はなんとなく自分が場違いなような緊張を感じながら食事をいただいた。最初の「いただきます」の後、誰も言葉を交わさなかった。多分、みんな同じように緊張していたのだろう。
全員の食事が終る頃になると、再び女中たちが客間に入ってきた。女中たちは手早く膳を重ねて運び出していく。その女中たちと入れ替わるように、今度は着物を持った女中たちが入ってきた。
私たちはこれといった説明もされないままに、「お召し物をどうぞ」と着替えることになった。女中たちは私たちの服を脱がせると、持ってきた着物を代わりに着せる。
でも、着物そのものの感触は悪くなかった。初めて袖を通す振袖は締め付けも少なかったし、面倒な着付けはみんな女中がやってくれた。私の振袖は淡い水色で、花の模様が一面に散りばめられていた。やはり振袖は高級品らしく、気後れするところはあったけど、手鏡で覗いてみた自分の姿は意外なくらい可愛くて、すっかり気に入ってしまった。
みんなの着付けが終ると、女中たちは部屋から去っていった。私たちの服は、女中たちが畳んで持っていってしまった。
女中たちと入れ替わるように、今度は時田が客間に入ってきた。時田に続くように、糸色先生が首をうなだれさせながら入ってきた。糸色先生は、普段どおりの袴姿に戻っていた。
「それでは皆さん、準備が整ったようですね。ではご説明しますので、適当なところにお座り下さい」
時田は欄間の下に立つと、私たちに丁寧なお辞儀をした。
いつの間にか、座布団は欄間を前に、一列の半円状に並び替えられていた。私たちが適当な場所に座ると、襖が開いて、黒子衣装の人たちが入ってきた。黒子衣装の人たちは、欄間にスクリーンを吊るし、私たちの後ろに映写機を設置した。映写機は随分古いものだった。色褪せたブリキのボディに、手回し式のハンドルがついていた。そんな映写機が三脚の上に組み立てられていく。
準備が終ると客間の照明が暗く落ちて、僅かな間接照明の光だけが残った。かたかたと映写機が動き始めた。正面のスクリーンにぼんやりとした光の像が浮かび上がる。間もなく像は色を持ち始め、二組の人形のようなものを浮かばせ始めた。
「……糸色家の“見合いの儀”についてご説明します……」
映画の音声は、昔の子供の声みたいだった。音源が古いらしく、声は一定に流れず、何度も間伸びした。
映像は茶色に焼けつつあった。画像の中央に、男と女を示した人形が現れるが、像が滲んでぼんやりとしたシルエットを浮かばせるだけだった。それが、不規則にガタガタと揺れている。
「……場所は当領地内。期間は丸一日。子の刻より24時間が対象となります」
スクリーンに糸色家を俯瞰から捉えた写真が浮かんだ。次に、振り子時計の画像が溶け込むように浮かび上がる。
「その間、目の合ったその時点で、成立。その二人は即、結婚していただきます」
ふたたび男と女を象った人形が浮かび、見詰め合う場面が映し出された。最後に、結婚装束を身につけた男と女の画像に変わり、映画は終った。

次回 P026 見合う前に跳べ2 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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■2009/08/15 (Sat)
春が巡ってきた。
ある晴れた日。青い空を、一機の航空機が横切る。
「来た」
季節が巡るように、サクラさんはやってくる。
60fa27f6.jpg20f52ccf.jpg季節が巡るようにサクラさんはやってくる。
長回しの多い映画だが、編集速度は一定間隔のリズムを持っている。このカットスピードが『めがね』という映画が持つ秘密だろう。


後を追うように、もう一人、島にやって来た。
タエコだ。
旅は何となく、思いつきで始まり、思いつきの方向に進む。
タエコも、特別な理由もなく、島にやって来た。
島には、島にしかない独自の空気と、時間が流れている。
タエコは、初めは島の空気に馴染めなかった。
だがやがて、のんびりと風景を眺め、
のんびりと時を過ごすようになる。
ここでは、なにもかも、のたり、のたり。
8f2a7b3e.jpg画面のあちこちに登場するワンコロのコージがいい感じだ。のんびりしているようだが、手入れは隅々まで行き届いている。心地よい清潔感が全体にある。映画はむしろ“汚し”で存在感やリアリティを演出しようとするから、その逆をいく映画だ。


『めがね』には全体を通して、独自の空気が流れている。
ac927256.jpg言葉の数は少なく、画面のディティールはすっきりと整理されている。
台詞の一つ一つは、なんらかのドラマを予感させず、解説もされない。
ただ、その場の気分だけを描き出している。
なのに、不思議と退屈はしない。
むしろ、気持ちのいい朝の目覚めのように充実した気分になる。
23f8e602.jpge5f7d885.jpg荻上直子監督作品『かもめ食堂』と同じく、『めがね』でも食事シーンは素晴らしい。献立がクローズアップされるカットは少ないが、どれも強烈に食欲がそそられる。見終わった後には、自然と「ご飯でも食べよう」という気分になる。
映画には、やかましいものがない。
言葉の一つ一つは、充分で居心地のよい間合いを作っている。
すっきりとした青い空が広がり、砂浜に波が打ち寄せている。
この映画に描かれているのは、静かな余白だ。
心の汚濁を浄化するような、静寂と静謐で満たされている。
1fa9fb43.jpgのんびりと、静かにそこに佇む映画。映画とは無関係だが、『どうぶつの森を』連想してしまった。もしかしたら、発想が近いのかもしれない。




“休憩のための映画”
それも、エンターティメントの種類としてあり得るだろう。
くつろぐために鑑賞する映画。
見る者は、映画が紡ぎだす時間に、逆らわずゆったりと身を委ねればいい。
だが、そんなくつろぎの時間も、いつか終わる。
ce8343b0.jpg休憩は永遠には続かない。映画の魔術は、いつも2時間で終わる。
『めがね』は決して押し付けがましくなく、拒絶もせず、ただ静かに佇んでいる。
誰かがふらりとやってきて、同居するのを決して拒まない。
そんな時間もやがて過ぎ去って、いつか現実に戻らねばならないときがやってくる。
『めがね』は我々を静かに、優しく現実に引き戻してくれる。

『かもめ食堂』の記事もあります。

映画記事一覧

作品データ
監督・脚本:荻上直子
音楽:金子隆博 主題歌:大貫妙子
撮影:谷峰登 編集:普嶋信一
出演:小林聡美 市川実日子 加瀬亮 光石研
    もたいまさこ 橘ユキコ 中武吉 荒井春代
    吉永賢 里見真利奈 薬師丸ひろ子 ケン



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■2009/08/15 (Sat)
94c3c141.jpgフィンランドのカモメはでかい。
丸々太った体で港をのしのしと歩く姿を見ると、小学生の頃に飼っていたナナオを思い出す。
ナナオは体重が10.2キロもある巨漢三毛猫だった。
誰にもなつかず、近所の猫にはすぐ暴力をふるい、みんなの嫌われ者だった。
でも、なぜか私にだけはそのでかい腹を触らせてくれ、喉をごろごろいわせ。
私はそんなナナオが可愛かったので、母に内緒で餌をたくさん与えていたら、どんどん太って、そして、死んだ。
ナナオが死んだ次の年、トラックにはねられて母が死んだ。
母のことは大好きだったが、なぜか、ナナオが死んだときよりも涙の量は少なかった。
それは武道家の父に、人前では泣くな、といつも言われていたからではない気がする。
私は太った生き物に弱いのだ。おいしそうにご飯を食べる太った生き物に、とても弱いのだ。

9e72c1e9.jpgフィンランドにかもめ食堂を開いて一ヶ月。
お客は一人もやってこない。時々、覗き込んでくるおばさんたちはいるけど、あえてかもめ食堂に入ってこようという人はいない。
私は毎日、退屈な時間をコップを磨いて過ごしていた。
そんなある日、かもめ食堂にフィンランド人の若者が入ってきた。にゃろめシャツの若者だった。
4fe9dece.jpg「かもめ?」
「かもめ。……あ、いらっしゃい」
お客さんだ。突然やってきたお客さんに、私はすぐに応じられなかった。
にゃろめシャツの若者は、かもめ食堂の奥のテーブルに座った。私はコーヒーを入れて、若者のテーブルまで運んだ。
「ありがとう」
若者は笑顔と日本語で応じてくれた。
「日本語お上手ですね。にゃろめ、ですね」
「好きですか?」
若者はシャツを引っ張って、私ににゃろめを見せた。きっと、日本の漫画が好きな人なんだ、と私は察した。
「はい、好きですよ」
私は機嫌よく答えを返した。実際、にゃろめは大好きなキャラクターだった。
「だれだ、だれだ、だれだ……ガッチャマンは好きですか?」
「ガッチャマン? ああ、“誰だ”じゃないですか。誰だ、誰だ、誰だ」
すると若者は、スケッチブックを引っ張り出した。
「全部ご存知?」
「全部? ちょっと待っててくださいね。誰だ、誰だ、誰だ……誰だ?」
メロディは知っているのに、出てこない。なんだか、もどかしい。
1205baba.jpg心地よい清潔感のあるかもめ食堂。手前の店には常にシャッターが下りている。かもめ食堂の右、左の店もいつも閉じているようだ。どうやら、周囲シャッター街の一角に、かもめ食堂のセットが作られたようだ。


940b33c1.jpgフィンランドの街角に、かもめ食堂は静かにたたずんでいる。
『かもめ食堂』には何となく静かで、伸びやかな空気が漂っている。
『かもめ食堂』の風景にはいつも手入れが行き届いていて、清潔感がある。
淡い色彩が重ねられ、光の感触も淡く、それが独特の穏やかさとぬくもりを与えている。
どこか、現実的ではない。日常的な食堂の風景だが、どこか桃源郷的な静謐が全体に漂っている作品だ。
39457e3c.jpg「外国食べる日本食は100倍うまい」とよく聞くが、この映画を見ると納得してしまう。ただし、一つ突っ込むとしたら“鮭”は日本の民族食ではない。日本人が鮭を食したのは戦後2、30年ほどの話。日本人自身が抱いている誤解だ。


b30f378b.jpgかもめ食堂』の物語は、のびやかに描かれているようで、実際は周到に順序だてられている。
登場人物は、それぞれなんらかの役割を担って、機能的に役割を演じている。
だからといって、理屈っぽく構築される物語ではなく、すっきりとした手触りを残すストーリーだ。
ed83e06e.jpgというのも、『かもめ食堂』の物語には目標地点がない。
一応、閑古鳥の鳴くかもめ食堂が繁盛するまでの物語と読み取ってもいい。
地域の人々との交流の物語と読み取ってもいい。
だが、『かもめ食堂』は目標に向かって邁進する映画ではない。
ただ、かもめ食堂に訪れて、伸びやかな時間をすごし、静かに食事をするひとときを過ごす映画だ。
b7dcb46d.jpgよくわからない存在の、もたいまさこ。かもめ食堂中で圧倒的な存在感を放つ。




何となくそこにいて、何となく静かにたたずんでいる映画。
美しさや良心を強く主張するわけでもなく、ドラマチックな何かが待ち受けている映画でもない。
ただ静かにそこにいて、静かなひとときを過ごす映画。
ゆるやかにかもめ食堂を訪ねて、空腹を満たす映画。あるいは、“癒し”のひとときに心の空腹を満たす映画だろう。

『めがね』の記事もあります。

映画記事一覧

作品データ
監督・脚本:荻上直子 原作:群ようこ 音楽:近藤達郎
出演:小林聡美 片桐はいり もたいまさこ
    ヤルッコ・ニエミ タリア・マルクス マルック・ペルトラ



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