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■2009/09/10 (Thu)
a21a840f.jpg時は戦国。争いあう三つの国があった。
野心の強い《山名》の軍勢は、莫大な富を抱える《秋月》を侵略。
激戦の果てに《秋月》を攻略した。
だが、《秋月》の城にあるはずの黄金は、どこにも見つからなかった。
《山名》は何としても黄金を手に入れようと、労働者を動員して、秋月城の地下を掘らせていた。
間もなくして、秋月城の地下から何かが噴出した。
もしや黄金か、と兵士たちが松明をもって集っていく。
だが、それを見た武蔵は「瘴気だ」と気付いて労働現場から脱出。
突如、爆発が起きた。ガスに火がついたのだ。
炎はどこまでも勢いをつけて、原形をとどめていた秋月城は木っ端微塵に吹き飛んだ。
労働者たちに騒動と叛乱が起き、武蔵は騒動のどさくさに紛れて脱出する。
dfb7265c.jpgリメイクされた『隠し砦の三悪人』はオリジナル版と違うイメージで制作されている。主人公二人からして、設定が違う。旧作はスターウォーズのR2-D2とC-3POの元ネタとなった。新しい主人公である武蔵は、はっきりと旧作にない人物だ。主体性を持ち、聡明で美形。旧作の農民キャラとははっきり違う。

50b27ab8.jpg武蔵はそのまま《山名》の軍団から逃げおおせるが、いつの間にか男がついてきていた。樵の新八と名乗る男だった。
武蔵と新八は、人で逃走を続ける。
やがて河原に行き着いて、水分を補給しようと水を飲んでいると、ふと黄金色にe0e015a8.jpg輝く流木に気付く。
なんだろう、と手に取ると、中から出てきたのは黄金であった。
まさか、《秋月》が隠した黄金か。
周囲を見回すと、黄金色に輝く流木はいくつもあった。
だがその直後、山に潜伏する野伏せりの男に、二人は捕まってしまう。
97591c1d.jpg新しい雪姫も旧作とまったく違う人物だ。旧作は美や可憐さとは程遠いキャラクターだった。新しい『隠し砦の三悪人』では、ドラマ部分に深く介入するために、言葉を喋れる設定になっている。



67dccc85.jpg武蔵と新八が連れてこられたのは、谷に隠された秘密の砦であった。
そこは、《秋月》の残党が潜む隠れ家。野伏せりの正体は、《秋月》の侍、真壁六郎太であった。
秘密を知った武蔵と新八は、真壁六郎太に殺されそうになるが、とっ65990fd2.jpgさの機転で「黄金を無事に運び出す方法」を真壁六郎太に教える。
武蔵の機転に感心した真壁六郎太は、役に立つかもしれない、と連れて行くことを決心。
同時に、《秋月》の兵士らも隠し砦の存在に気付き、300人の兵を率いて攻撃を開始。
真壁六郎太は、隠し砦に隠していた雪姫を引き連れ、武蔵と新八とともに脱出を試みる。
2dc13221.jpg左のカットは明らかにダースベイダーだ。樋口真嗣監督は、はっきり『スターウォーズ』世代と公言している。だから『隠し砦の三悪人』のリメイクというよりは、『スターウォーズ』よりの描かれ方となっている。『スターウォーズ』の新邦訳という見方もあるだろう。


345f0577.jpg『隠し砦の三悪人』といえば、名匠黒澤明監督の代表作の一篇である。
困難な状況におかれた三人が、知恵と絞りあって切り抜けていく物語だ。
リメイク作品である『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』は、巨匠の傑作に大胆な改変を加え、新たな作品として再生している。
新しい『隠し砦の三悪人』は、実景をさらにデジタルエフェクトによって補強し、より空想的なビジョンを強めている。
リアリズムを持った戦国時代絵巻というより、まったくの空想物語として描くためだ。
映像も俳優も、より洗練されたイメージで描かれ、過去作品の野獣のような印象は薄まった。
俳優はより精悍で、女性は可憐に、男も女も美しく清潔な印象で描かれている。
旧作より明るく、親しみが感じられる映画に変わっている。
2bda3835.jpg樋口真嗣は物語の進行を停滞させてでも、情緒を描き出そうとする。一方、黒澤明はカットの構成を重視しすぎる監督だ。隠し砦に潜む郎党達も、ほとんどがロングサイズで顔の判別がつかず、独白もなかった。一方、樋口監督は俳優にとことんカメラを接近させる。物語に重要でなくても、何かを語らせようとする。この監督の感性の違いが、新旧の違いである。
a01a1f1a.jpg『隠し砦の三悪人』の本質は脱出にある。
あえて困難な状況が設定され、そこからいかに脱出を試みるか。
新しい『隠し砦の三悪人』は、あらすじとシチュエーションだけを旧作と同じに描き、「脱出方法」だけを新しく描きなおしている。
aa971bbc.jpgもしも、あの三人が違う方法で脱出したら。その場合、どのような物語の変化が訪れるのか。(ゲームでいうところの“2週目”的な内容だ)
新しい『隠し砦の三悪人』はそんな“もしも”を描き、大胆なデジタル技術でドラマを補強した映画だ。

3614bbcb.jpg新しい『隠し砦の三悪人』は、旧作が寡黙に思えるくらい、あまりにも雄弁だしずっとスピーディに物語が展開する。
旧作では緩慢に準備されていたあらすじは、わずか20分という剛速球でまとめられている。
どんな場面でも必ず伴奏音楽が演奏され、どのシー68583139.jpgンも印象的にしている。
人間のドラマは、確実に情緒を強める方向で描かれている。
『隠し砦の三悪人』は、アクション巨編としてのダイナミズムはより過激に、ドラマはより濃厚に、エンターティメント映画として楽しめる映画として復活した。

映画記事一覧

作品のデータ
監督:樋口真嗣 音楽:佐藤直紀 脚本:中島かずき
オリジナル脚本:菊島隆三 小国英雄 橋本忍 黒澤明
撮影:江原祥二 編集:上野聡一
出演:松本潤 阿部寛 長澤まさみ 宮川大輔 椎名桔平
〇〇〇甲本雅裕 皆川猿時 小松和重 田鍋謙一郎 古田新太
〇〇〇坂野友香 中村橋弥 生瀬勝久 國村隼 高嶋政宏



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■2009/09/10 (Thu)
タイを中心に、謎のウィルスが発生。ウィルスに感染すると、全身から血を噴き出し死亡してしまう。
そのウィルスは自然的なものではなく、人間の手によって作られたものだった。事件の背景にあるのは、人類の増加を抑制しようとする、過激派の自然保護団体ブルーシップの陰謀だった。ブルーシップは新種のウィルスを武器に、世界の破滅を目論んでいた。
61a4d56d.jpg86af70de.jpg物語のキーを握るのは、二人の少年と少女。Lに保護され、ともに活動する。しかし物語を俯瞰してみると、あまり物語の構造に介入してこない。「設定だけで役に立っていない」キャラクターになっているのが残念だ。
タイに潜入捜査していたFは、少年を連れ、村から脱出。
少年はウィルスが蔓延する村にいながら、唯一感染しなかったのだ。しかし、ブルーシップの刺客がFを葬ろうと追跡する。
死を覚悟したFは、少年をワタリに託し、死亡する。
79860be6.jpg87170b6e.jpgライトとの戦いを終えたL。死までの23日間を、捜査資料の整理に当てようとする。


一方日本では、エルはライトと最後の決着を終らせるところだった。
エルはデスノートに書かれていたルールを利用し、ライトの犯罪を暴きだす。戦いはエルの勝利であったが、結果としてエルは23日後の死亡が確定してしまった。
エルの死亡まであと23日間。そんな最中に、タイの少年が、ワタリを頼って訪ねてくる……。
3033c80d.jpg157b6835.jpg本当の天才は常に社会に影響を与えるもの。天才に急速は与えられず、次なる挑戦が突きつけられる。Lの前に現れたのは、同じ孤児院を卒業した“天才”。Lの相手に不足はない。
人気原作をヒントに制作された、オリジナル・ストーリー作品である。
8aed11d5.jpg手抜き映画にしか見えなかった前作『デスノート』より、確実に物語の規模はスケールアップして、いくらか落ち着いて観賞できる作品となっている。
跳躍したストーリー・アイデアは相変わらずだし、それが密度の高いディティールの中で描かれ、より『デスノート』らしい風格が現れている。
58f246f2.jpg話題映画であるが、大金が注ぎ込まれた大作映画ではない。むしろ予算的には低予算映画くらいだろう。冒頭の奇病が発生するタイのシーンは致命的な安っぽさだ。冒頭シーンは観客を引きこむシーンなのに、スタート地点からやや苦しい。

b4bddea9.jpg今回のLの敵は、同じくワタリの教え子であるKのコードネームを持つ女だ。Lと同様の天才的頭脳を持ちながら、人類に失望し、世界滅亡の計画に加担する。ライトと方法は違うが、やはり新世界の創造を目的とする。
新世界の覇者を計画する女とL。
c55164d5.jpgライトとLという構図は、そのまま踏襲しつつ物語を新しい領域に突入させている。原作を再構築し、新しい展開を作り出す方法としては、実に正しい描き方をしている。

587a6baf.jpg『デスノート』の魅力は跳躍したストーリー・アイデアにある。名前を書き込んだら死亡してしまうノート。それを拾ってしまう天才少年。天才ライトは、そのノートを使って理想世界の再構築を想像する。
8bd9d1fb.jpg物語の中心となるのは、ライトとLの頭脳戦だ。物語の背景は平凡な日常だが、あらゆるものが対決の道具として利用される。テレビ・メディアやFBI(FBIは米国外での活動は認められていない)、そのうちにもミサイルなんてものも出てきた。面白ければなb4bcb337.jpgんで活用する、意外性があれば考証など必要としない。
はっきりいえば、ミステリとしては不合格だ。フィクションなど所詮、ウソの物語に過ぎないが、接している最中だけは現実に感じられなければならない。そうでなければ、読者を引き込み、一定の緊張感を与えることはできない。「ひょっとして、事実としてありえるかもしれない……けど」その緊張こそが必要なのだ。
だが『デスノート』には跳躍したアイデアが次々と飛び出す。冒頭の「デスノート」というアイテムからして、リアリズムの世界から一歩、踏み外してしまっている。しかしだからこそ、読者を未体験の領域へと引き込めたのだ。絶対にありえないが、物語のルール上ではすべてがありえる現象として描かれている。そのルールの中で、近年のスポーツ漫画にすらないギリギリまで神経をすり減らした頭脳戦に読者を読書に引きこんでいった。
その一方で、人物や背景の描写は驚くほど高精細に描かれていく。徹底した観察と完璧な描画力によって、物語が欠落している“リアリズム”を回収しようとする。
リアリズムという発想を捨てたからこそ、『デスノート』という物語のあったのであり、あの狂騒的な緊張感が描き出せたのだ。
868c485d.jpg何のために登場したのかわからないFBI役の南原清隆。テレビ出資映画だから、おそらく「テレビで有名な芸能人を出せば注目される」と判断されたのだろう。日本式スターシステム、というビジネスモデルの残像(信仰というべきか?)はまだまだ業界に根強い。
d8329f74.jpg実写版『デスノート』はおそらく、リアリズムの設計を間違えた作品なのだろう。『デスノート』は物語にはリアリズムはないが、あの重量感のある絵画があったからこそ、バランスが保てたのだ。
実写版『デスノート』は何もかもが軽々しく、緊張感などどこにもない間抜けな映画に作られてしまった。おそらく前作を担当した金子修介監督は、原作『デスノート』の読み方を間違えたのだろう。それから、読者がどんな視点で見ていたのか、それも同時に読み違えたのだ。

実写版『デスノート』の続編として描かれた『L cange the WorLd』はある程度の軌道修正として作品が再構築されている。
原作の特色をうまくすくい取り、オリジナル・ストーリーとして再構築している。跳躍したストーリー・アイデアと天才同士の対決、その周辺に描き出される少々のリアリズム。『L cange the WorLd』はちゃんと『デスノート』として描かれている。
140adcbb.jpg物語に意外性はまったくない。大人しく形に収まったという感じだ。ただ松山ケンイチは、映画史に残るユニークなキャラクターを体現した。Lとお別れするのが、少し惜しい気持ちになる映画だ。

1a666913.jpg主人公のLは、前作の攻防戦の結果、あと23日で死亡するという回避不能の宿命を背負っている。
しかし、Lは最後の瞬間まで事件を諦めない。
『デスノート』においては部屋から一歩も出なかったLが、外に飛び出し、身を削って走り、飛び、息を切らせる。ワタリなき今、Lはたった一人で最後の戦いに挑んでいく。
Lにとってこの物語は、戦いの物語である以上に、成長の物語でもあるのだ。
終わりのときまで人生を諦めず、何を残せるのか。Lは、たった23日の間に人生のすべてを凝縮させようとする。
いかにも番外編という小さな作品ではない。Lの最後にふさわしい、痛快なエンターティメントだ。

映画記事一覧

作品データ
監督:中田秀夫 原作:大場ツグミ 小畑健
音楽:川井憲次 脚本:小林弘利
出演:松山ケンイチ 工藤夕貴
〇〇〇福田麻由子 南原清隆
〇〇〇平泉成 福田響志



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■2009/09/10 (Thu)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P050 第5章 ドラコニアの屋敷


私たちは男爵が消えた部屋の中へ進んだ。入口の枠はやけに広く、高かった。両側にかつて蝶番があったらしい跡が残っていた。多分、大きな両扉だったのだ。
入ってみると、広い部屋に繋がっていた。右の空間に赤い絨毯が敷かれ、絨毯の中央にテーブルが置かれていた。テーブルの上に燭台が置かれ、無数の蝋燭の炎が暗闇に揺れていた。
赤い絨毯は左手と奥に伸びて、別の部屋に続く扉と繋がっていた。暖炉も置かれていたが、もちろん火は入っていない。
「好きな席に座りたまえ。ただし、そちらの端は私の席だ。それ以外なら、自由に座っても良い。私は、少し食事の準備をしてくるよ」
男爵が赤絨毯に立って説明した。男爵の席は奥のお誕生日席だった。
それから男爵は、執事みたいな恭しいお辞儀をすると、奥の扉へと消えていった。
私たちは、少し躊躇うように互いに顔を見合わせた。やはり千里が一番にテーブルに向かって歩き出した。それに続くように、私たちはテーブルに進んだ。
窓を背にする席に千里が座り、その左隣にまといが座った。さらに左の、男爵と向かう角席にはあびる。次に藤吉。テーブルを折り返して私、可符香という席順だった。テーブルは横に長く、男爵の席と一番離れた場所に皆固まって座った。
汚い屋敷だったけど、テーブルと椅子はまあまあ綺麗だった。座る前に椅子を確認したけど、埃などの汚れはとりあえずない。椅子は背が高く、私の身長と同じくらいのところで鋭角的に切り取られていた。クッションの色は赤だった。
テーブルは濃いブラウンで、使い古しているらしく、傷が一杯に刻まれていた。だが、そのうえからコーティングを被せているらしく、触れても傷の感触はなかった。
テーブルの上で、燭台の蝋燭が輝いていた。燭台は銀製で、アールヌーボー様式の装飾が施されていた。蝋燭の光で、みんなの顔が一人一人仄暗く浮かび上がった。
間もなくして、奥の両開きのドアが開いて男爵が入ってきた。男爵は白いエプロンをつけてカートを押していた。同時に、肉料理らしい芳しい臭いが漂ってきた。
「すまないが刑期を終えたばかりで、まだ使用人も料理人も雇っておらんのだよ。だが、料理の味は保障しよう。料理は専門店で調理され、週に2回、私の屋敷に配送される仕組みになっておる。私は料理人と顔を合わせず、ただ調理を過熱するだけ、というわけだ。私が味付けをしたんじゃないから、皆も安心だろう」
男爵は言いながら、私たちに料理を盛りつけた皿を並べていった。
「あの……、僕の分は?」
皿は三つ。チキンスープを入れた皿に、ライス。三つ目は、肉料理とサラダを盛りつけた皿だった。それから、グラスに入れられた水が添えられた。
「あなたは、糸色先生とどういう関係なんですか?」
千里が男爵を振り返って訊ねた。
「あれは10年前の話だ。糸色望は当時、高校2年生。17歳だったな。あの頃の糸色望は、まあ若いせいだろうが、なんでも首を突っ込み、無茶に挑戦する無謀な少年だった。今より余程の覇気のある男だったよ。だから、私にも挑戦を挑んだのだろう」
男爵はエプロンを外しながら、少し昔を懐かしむように語った。
私は男爵の話を聞きながら、また17歳だと思った。糸色先生が今みたいな根暗な性格になった理由。10年前の事件。そう、男爵と関わっているんだ、と確信した。
「勝負ってどんな?」
千里が情報を聞き出すように追求した。
「下らない話さ。私が負けて、糸色望が勝つ。あれは一生かけても消えない屈辱だった。話なら糸色望本人から聞くといい。私自身に、屈辱の物語を話させるつもりかね」
男爵は冗談めかして言うと、エプロンをカートの中に押し込んだ。

次回 P051 第5章 ドラコニアの屋敷9 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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■2009/09/09 (Wed)
始まりはブロークバック・マウンテンだった。
イニスとジャックは、ブロークバック・マウンテンで羊の番をする仕事を請け負っていた。
羊の番の仕事を切っ掛けに、二人の男は出会った。
929b3412.jpg67ea67ea.jpg左:イニス
右:ジャック
二人は性格も生い立ちも違う。もちろん、同性愛者ではない。はじめはごくふつうの仕事の同僚、男友達という関係から始まった。

5a035ca9.jpgブロークバック・マウンテンは美しい山だった。
鮮やかな緑に、小川が穏やかに流れ落ちている。
空の眺めを遮るものはなく、いつも層積雲が連なっていた。
一方で、厳しい環境の山だった。
肌寒くて、天候が崩れやすい。
31da50fb.jpgそれに常に狼やコヨーテに狙われる危険のある仕事で、ほぼ一日中、羊を見張っていなくてはならなかった。
9d5a89bd.jpg人の絶えた風景。美しいが過酷な自然が二人の前に立ち塞がる。強い結束で結ばれた二人。その関係は、間もなくもっと深く、強力なものへと変質させる。e21d37a2.jpgしかもブロークバック・マウンテンならば、どんな間違いも秘密も守られる。
そんな場所で、イニスとジャックは結ばれた。
初めはジャックが一方的に、強引に誘った。
イニスは、ジャックを拒否しようとした。しかし次の瞬間には、イニスも何かに憑かれるように、ジャックを受け入れていた。
eda6641e.jpg51fa3362.jpg「この関係は一夜限りで終わりだ」イニスとジャックはそう話し合う。だが、心が、体が二人を引き合い続ける。最も深い関係。いつしか互いの存在を渇望するようになっていた。

男同士にしか、わかりえない結びつきはいくらでもある。
男同士にしか通じない心の葛藤や、絆の深さ。
男と女では決して得られない、精神の結びつき。あるいは友情。
それがどこかで性的な気色を帯びて、肉体的に結びつける瞬間だってあるだろう。
そんな《ボーイズ・ラヴ》の瞬間が。
29c31397.jpg4b7fbf0e.jpg山を後にした二人は、ごく普通の伴侶を得て平凡な人生を取り戻そうとする。イニスもジャックも、お互いの関係を忘れようとしたが……。こうした映画の常だが、女性はあまり魅力的に描かれない。男性の魅力が強調的に描かれる。
映画の前半部分の舞台は、美しいブロークバック・マウンテンだ。
決して人が訪ねることのない場所。
どんな過ちも疑いも、大地が覆い隠してしまう場所。
決して秘密が明かされない場所。
イニスとジャックが結ばれるのは、そんな場所だ。
一度きりと決めた肉体関係。
だが、ブロークバック・マウンテンを去った後も、二人の同性関係は延々と続いていしまう。
f713ef2a.jpg美しすぎるブロークバックマウンテンの風景や記憶が、思い出をより幻想的なものへと変えていく。イニスとジャックは、あの思い出を引き出すように、互いを強く引き合わせてしまう。だが、それが二人を破滅に導く。
思い出という幻想に引き摺られ、最後まで思い出からの帰還に失敗した二人の物語である。

イニスとジャックを包む自然の光景は、どこまでも美しく、開放的に描かれる。
一方で、現実の社会は常に暗雲が立ち込め、どこかよそよそしい。
イニスとジャックの関係には、死の恐怖が付きまとっていた。もしイニスとジャックの関係が公になったら、きっと社会は二人を排斥しようとするだろう。
殺されるかもしれない。
923c0c6a.jpgイニスとジャックは、そんな危険を知りつつ、逢瀬を重ねる。
命の危険を冒しつつ、二人は結びつきをどこまでも強めていく。
現実の社会は、少しずつ二人を追い詰めて、望まぬ結果に引きずり込もうとしている。
だが二人の心は、未だにブロークバック・マウンテンに置き去りにしたままだった。

映画記事一覧

作品データ
監督:アン・リー 原作:アニー・プルー
音楽:グスターボ・サンタオラヤ
脚本:ラリー・マクマートリー 、ダイアナ・オサナ
出演:ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール
〇〇〇ミシェル・ウィリアムズ アン・ハサウェイ
〇〇〇ランディ・クエイド リンダ・カーデリーニ
〇〇〇アンナ・ファリス スコット・マイケル・キャンベル



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■2009/09/09 (Wed)
f29ac35b.jpgブライアン・ケスラーは作家であった。だが、本を出版しているわけではない。ある雑誌に、連続殺人者の記事を書いたのが認められて、本になる話が舞い込んできた。
しかし、雑誌の小さな記事を書くのと本を書くのとは勝手が違った。前金をもらったけど、車と家賃で大半は消えてしまった。
本の執筆はなかなか進まない。取材を始めて、図書館で得た知識がいかに無益か学んだ。図書館では、誰も人を殺さないからだ。
deefec7a.jpg367cba25.jpgブライアンは本だけの知識で、殺人者を分析する。彼らは被害者であり、同情すべき存在である、と当初考えていた。

bad50efc.jpg「ここを出てカリフォルニアに行きたい」
同棲しているアデール・コーナーズがうんざりした声で訴えた。アデールはプロカメラマンだがなかなか才能は認められない。だから、いま執筆している本に載せる写真を撮ってもらっていた。
4fd0ff8b.jpg――カリフォルニアか。
アメリカ大陸の西の果て。当時カリフォルニアは楽園のように思われていた。暖かで穏やかな場所で、鬱屈する何かを劇的に変えてくれる場所。
ブライアンもできるならカリフォルニアで暮らしたいと考えていた。しかし、カリフォルニアへ行くまでのお金がない。
そこでブライアンは考えた。同乗者がいれば、カリフォルニアまでのガソリン代が半分になる。
さっそくブライアンは、掲示板に自分の要件を書いたメモを貼り付けた。
“求む。1週間のアメリカ横断ドライブ。歴史的殺人現場ツアーの同乗者を”
b16ee7b6.jpg480e76bf.jpgブラッド・ピットとデビッド・ドゥガヴニー共演作品だ。今ならもっと話題になりそうな組み合わせだ。デビッド・ドゥガヴニーは『X-FILE』シリーズが有名になりすぎてもうないかも知れない。
間もなく名乗り出たのはアーリー・グレイスとキャリー・ローリンの二人だった。
一見して貧しく、素行の悪そうな二人。ブライアンは二人を乗せてカリフォルニアまでの旅に出るが、間もなくアーリーこそが自分が探し求めていた殺人鬼であると判明する。
345ffdd8.jpg殺人者を演じるブラッド・ピット。ブラッド・ピットは美形だがそれを生かした作品は少ない。むしろ、異端者『ジェシー・ジェームズの暗殺』のような作品を好む。殺人者に何か思い入れでもあるのだろうか?


映画『カリフォルニア』の物語はいかにもホラー映画だ。たまたま乗せたヒッチハイカーが殺人鬼だった。ハリウッド製スラッシャー映画において、何度も繰り返し制作された王道パターンである。
d899c076.jpgだが、映画の組立てははっきりとホラー映画ではない。明らかに、映画監督はホラー映画を指向していない。
BGMの少ない静かな印象。大袈裟に恐怖を煽り立てるような演出は少ない。ただただ、淡々と物語が流れていき、人間を描写していく。
ホラー映画ではないが、驚くような映像美も哲学的な啓蒙もない。映画は静かに物語を綴っていく。
物語の展開は、やや緩慢に思えるくらいだ。ブラッド・ピットが殺人鬼の役であるのは、すでに広告ポスターに書かれているから判明している。だが、その本性を見せるのは物語のずっと後半。そこに至るまで、映画は淡々とブライアンとアーリーの交流を描いていく。
1725f2ae.jpgアーリーのような人間には、感情移入の感性がないのだろう。よく教育の問題にされがちだが、おそらく教育云々も、脳科学も関係ない。むしろ教育による脅迫は、子供に暴力的な観念を与えるだけだ。


96229ecd.jpg間は誰もが同じ考えを持ち、同じ社会意識を共有して生活していくのではない。
正常と認定される人間には理解しがたい話らしいが、異常とされる人間は、社会の常識や習慣といったものがなかなか理解できない。
27cf0c7c.jpgまともな人間にとって、思考せずとも当然として受け入れられるあらゆる事象が、異常な人間にとって、一つ一つ「なぜ?」と問題提起し、解決していかないと当り前の日常すら受け入れられない。
善悪の意識や観念も同様だ。
当然の社会規範や、当然のモラル。それから事象に対する感情の抱き方。
異常な人間は、一般の人間が思考せず「当然」と見過ごしてしまいそうなものに対しても、まったく違った感性で接する。異常な人間は教育されたとおりの感情を抱かず、自身の美意識で決断する。
だからこそ、異常者は違反行為を犯しても動揺しない。冷徹に、違反行為を遂行する。はっきりいえば、異常者にとって殺人は、食べる息をすると同じくらいのレベルでの“ただの行為”に過ぎないのだ。
e9b45167.jpg冒頭シーンで「反キリストは男の体に潜む7つの尻尾を持った女」と謎の台詞がある。カリフォルニアが楽園である一方、そこが地獄であると示す台詞だ。



アーリーはそういった種類の異常者だ。アーリーは盗みや殺人に罪の意識はまったくない。どんな社会制裁も、彼の行動や意識にまったくの影響を与えられない。
アーリーはただただどこまでも無軌道で、その無軌道な衝動を自身でも抑えようという発想がない。アーリーはひたすら思いつきと願望を実行するだけの人間である。
そんなアーリーを同じ車に乗せたブライアンは、間もなく地獄を知ることとなる。だがそれは、カリフォルニアという天国に辿り着くまでに、潜り抜けねばならない地獄なのかもしれない。

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作品データ
監督:ドミニク・セナ
原案:スティーヴン・レヴィ ティム・メトカーフ 脚本:ティム・メトカーフ
撮影:ボジャン・バゼリ 音楽:カーター・バーウェル
出演:ブラッド・ピット デイヴィッド・ドゥカヴニー
〇〇〇ジュリエット・ルイス ミシェル・フォーブス
〇〇〇デヴィッド・ローズ ジョン・ダラガン



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