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■2009/12/28 (Mon)
ぢごぷり01ある3月の晴れた日。出産を終えた沖浦あやめは無事に退院した。
18歳。当り前だけど、初めての出産だった。
「うれしそうだね、かなめちゃん」
後ろの座席で、あゆみが声をかけた。その右隣では、チャイルドシートで赤ちゃんが静かに眠っている。
「うっ、それはだって、もう、ガラス越しじゃないから……」
日野あやめはルームミラーの中に映るチャイルドシートをちらちらと見ていた。といっても、その断片が見えるだけで姿そのものは見えない。
日野かなめと沖浦あゆみは双子の姉妹だ。同じ日に生まれた18歳。双子だから当然同じ顔をしているし、髪の癖まで一緒だ。でも、その中身は正反対というほど違っている。
落ち着いたあゆみに対して、かなめは派手好き可愛いもの好き。今だって、堂々としたゴスロリファッションだった。
「そうだね。実際私も、病院では授乳の時くらいしかユメちゃんと会ってなかったけど、今日からはずっと一緒なんだよね」
あゆみは感慨深げに、側で眠っている赤ちゃん――夢子に目を向けた。
「やっぱり、ミルクじゃなくておっぱい? 完全母乳? ……私もミルクあげてみたい」
かなめは真剣な顔で希望を告げた。かなめの頭の中には、少女漫画チックな育児風景が浮かんでいた。
「うん。もちろんミルク上げてもいいけど。でも私、思ってたよりずっと“出る”体質みたいだから……。できるだけ完全母乳、頑張ってみたいの!」
あゆみは大きく膨らんだ自分の胸に手を当てながら、力強く微笑んで見せた。
「……ちぇ」
かなめはつまらなそうに口を尖らせた。ついこの間まで、同じくらいのおっぱいだったのに、とちらと思っていた。

5489c449.jpg登場人物は沖浦あゆみと日野かなめの双子姉妹。それから出産して間もない夢子。出産したのは沖浦かなめである。主だった登場人物はとりあえずこの3人だけである。
ある産婦人科から退院したかなめは、あゆみが運転する車で運ばれて、どこかのアパートの一室へと帰っていく。物語の主要舞台はこのアパートの密室がすべて、と言っていい。アパートの外に出る場面はいくらか描かれるが、断片的なものに過ぎない。だから、赤ちゃんがいるというシチュエーションを持った密室劇と読むべきだろう。
赤ちゃんの容姿は、観察とディフォルメの微妙な組み合わせで描かれている。はっきりと言うべきは、確実に言って赤ちゃんを可愛く見せようとはしていない、ということだ。赤ちゃんは物語に中心にある渦であり、あゆみかなめ姉妹を問答無用に取り込み、追い込んでいく。そもそも、赤ちゃんはただ可愛いだけの存在ではない、と提示したかったのだろう。サブタイトルが「地獄〇丁目」となっているのも、同じ理由からだろう。
b66cf795.jpg沖浦あゆみと日野かなめを取り巻く状況は異様であり、特殊である。まずいって、この2人は何かの仕事に就いているわけではない。18歳という社会的にも幼い年齢だ。だが、生活面資金面に困っているようには見えない。あゆみが運転する場面はよく描かれているのだが、車など18歳の年齢でそうそう買えるものだとは思えない。
そうした疑問に対して、答えを示してくれそうな予備情報は一切示してくれない。物語の中心はあくまでも赤ちゃんと母親の交流に絞られ、描写はアパートの一室内に限定される。
その一方で、育児に関する描写は驚嘆すべき密度で描かれる。ウンチの後始末や、オムツの替え方、体の洗い方や授乳に関する知識。また育児雑誌や本などでなかなか描かれないであろう出産後の母胎の細かな異変、変調まで詳らかに描写している。
だが、『ちごぷり』は育児や母親のためのハウツー本ではない。あくまでもエンターティメントであり、物語の中心は、かなめという視点を通して母親の心理状況とその変化について語られていく。
f9f65769.jpgたかが育児、と考えがちだが、赤ちゃんが介在する日常は驚くほどの緊張感で満たされている。社会的な時間を無視してでの、問答無用の夜泣き、要求、おっぱいくれオムツ替えろの催促。それに応じ、ひたすら消耗していく母親あゆみの心理描写。その描写の一つ一つは、育児に対する甘い幻想など木っ端微塵にしてくれそうな破壊力に満ちている。
あるアパートの一室。自由恋愛の結果としてできた赤ちゃん。しかし育児がうまく行かず次第に追い詰められていく。現代の若く未成熟で社会から切り離された夫婦にありがちな光景である。昨今の育児環境を思うと、笑っていられない光景だ(これを論じるならば、現代社会による『若者に対する拒絶』について語るべきなのだが、それは本旨ではないので、また別の機会に)。もっとも、作者来尾士目の漫画としての狙いは、社会風刺にあるわけではなく、あくまでもエンターティメントだ。しかし、はからずともそうした現代的な側面も描いてしまっている。
『ちごぷり』は密室劇である、とはすでに書いた。アパートという閉鎖された空間に、母親がいて、赤ちゃんがいる。物語の組立てとしては、それが全てだ。
13b2e575.jpg赤ちゃんの世話のためにひたすら消耗し、神経をすり減らしていく……。体力的精神的に消耗し、やつれていく描写は極端だが生々しく、異様な効果を読者に与える。
キャラクターは目の大きな可愛い美少女として描かれているが、それがある程度のクッションの役割を果たしているはずだ。漫画で描かれている心理描写は、表面的な可愛らしさを確実に飛び越えて、抉りこむような心理的生々しさを描き出している。
母親は赤ちゃんに支配された囚人のようなものだし、赤ちゃんによって縛り付けられる空間は監獄の感覚に近い。決して外には出られず、ひたすら自己中心的自我の権化とも言うべき赤ちゃんの奉仕に何もかも吸い取られていく。育児とはここまで過酷で不条理なものなのかと思わせる描写である。
cb59d0ea.jpg物語の展開は、エンターティメント漫画としては恐ろしくスローペースである。赤ちゃんとの関わる日々を、丹念に1日1日丁寧に描かれている。ある意味、現実的にありそうな事件をひたすら描写しているだけ、と言えなくもないが、それでも育児という過酷さ、強烈さを嫌というほど見せ付けていく。世の男は、この漫画を読んで、女たちに土下座しろといったところだ。
『ちごぷり』はただの『育児漫画』である。それ以外の情報は何一つ描かれず、漫画世界の中から削ぎ落とされてしまっている。しかし、その育児に関するディティールは圧倒的である。物語はアパートの一室で完全に自己完結しているが、それでもエンターティメントとして充分に自立する迫力である。物語の行方がどこにむかっているかわからないが、見守っていきたい作品である。

読書記事一覧

漫画・著作:木尾士目
編集・出版:講談社
連載:アフタヌーン(2008年7月号~2009年5月号)






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